vol.13
「クラッチについて」
ビートはNA小排気量エンジンですから、さほどパワーやトルクはありませんので、普通に乗っていればクラッチディスク面の摩耗はほとんど発生しません。
経験的に街乗りONLYのビートのクラッチディスクは10万km走行していてもまだ使用できる程厚みは残っています。
もちろん乗り方次第で限界まで到達している個体もありますが、総じてディスクの厚みに関してはかなり寿命は長いと言えます。
しかし、ディスク面以外のダンパースプリング部やそれらを押さえているリベットでかしめられている鉄板プレート等はかなりガタガタになっいるケースが多いです。
これまでの最悪のケースでは街乗りのみの走行で6万km程度でダンパースプリングがバラバラに折れて変な場所に入り込み、クラッチが切れなくなるということがありました。
ビートは非力ではありますが、ミッドシップでトラクションが良く高回転まで気持ち良く回るエンジンの特性上、クラッチミート時の衝撃が他のFF車等に比較して大きいということと、設計上の強度が不足しているという感じがします。
ビートでサーキット走行やジムカーナ走行をするようになって、クラッチの強化に目覚めた訳ですが、今から10年以上前の当時は強化クラッチはO社製品しか存在していませんでした。
このO社の製品はほとんどのパーツを様々な車種と共通化することによってコストを下げていたと思われます。
車種毎にフライホイールの外周リングギヤとクランクシャフトへの取り付け部の変更、クラッチディスクのセンターボスの変更、レリーズベアリングのホルダーの変更によって多くの車種に対応させています。
使用されているダイアフラムスプリングはかなり強いタイプで昔から150馬力ぐらいのパワーに対応していたと記憶しています。
最近の軽自動車のターボ車ならそれくらいの出力は珍しくないでしょうが、NAのビートですから明らかにオーバー目の圧着力です。
油圧クラッチのビートでも結構踏力が必要ですが、これがワイヤー式のトゥデイになると更に重くなります。
また決定的に厳しいのはクラッチディスクにダンパースプリングと呼ばれる衝撃吸収構造が無く、高回転時のクラッチミートの際にもろにミッションギヤやデファレンシャルギヤ、デフケース等に衝撃が伝わり、結果破損しやすいという欠点があるのです。
ビートは非力ですが、トラクション性能に優れているのでSタイヤのグリップの良さが加わると結構ギヤ関係のトラブルが多くなります。
実際、弊社でもレース中に2速から3速へのシフトアップ時にデフギヤが割れるというトラブルに見舞われたことがあります。
何とかギヤ関係に優しい強化クラッチを作りたいと思い、2004年にある程度の水準に達したクラッチを世に出しました。
しかし、少量の生産というより完全にハンドメイドみたいな作り方でしたのでコストが非常に高くなってしまいました。
今回リリースする強化クラッチは扱いやすさや耐久性やコストを特に重視しています。
専門メーカーに特注で依頼して純正比約1.5倍の圧着力のダイアフラムスプリングを採用していますので100馬力程度までは十分対応すると思います。
余談ですが「ビート用」とオーダーして、もしある程度の数が売れたのがばれると、その会社でも真似されかねないと思い、発注の際は「アクティ用」と称してオーダーしています。
前作よりはセットの値段は下がりましたが、フライホイールと各ディスクが値上がりしてしまい、大幅に値下げが出来ませんでした。
先日のKカースペシャルミーティングでの3時間耐久レースでもトゥデイに試作品を装着してテストし、最初から最後まで全くフィーリングに変化の無い性能の高さを実証しました。
以前使用していたO社製だとたぶん左脚がつっていたかもしれません。
ビートやトゥデイでスポーツ走行をされる方やエンジンチューニングで大幅にトルクが増えている方には特にお勧めのクラッチです。
一度導入していただくとかなり長期に渡って使用可能だと思います。