vol.04

「エンジンチューニングについて」
ビートのエンジンは皆さんもご存知のように専用設計ではなく、トラックのアクティーやトゥデイなどに使われていたE07Aをベースに、メーカーによるチューニングを施し、軽自動車の出力の自主規制値の上限である64PSを実現しています。
その主な手法としては、まず圧縮比のアップ、ハイカム化、ビッグバルブ化、3連スロットルの採用、等長タイプのエキマニの採用etcといった具合に、NAエンジンの常套手段とも言える方法でパワーを向上させています。
ただし、どうしてもコストの制約やレギュラーガソリンに対応させなければならないという制約や騒音の問題から、詰めきれていない部分が出てくるのです。
私がビートに初めて乗ったのは、もう今から9年ぐらい前でしたが、メーカーのテスト車両だったにも関わらず、あまり加速しないなぁと感じたのを覚えています。
その理由として、やはり車体がオープンカーで剛性を出すために重たいということ、つまりパワーウエイトレシオやトルクウエイトレシオの数値が大きいということになります。
1馬力で動かす車重を軽くすればするほど、加速が良くなります。
ビートを速くしようと思えば、(どの車にも当てはまりますが)この数値をいかに下げるかが、ポイントになってきます。
そこで、多くの人はエンジンをチューニングしようということになるのです。
割り算の分母を大きくするということです。
昔から、「排気量に勝るチューニング無し」と格言のような言葉があります。
要するに500ccよりも600cc、1000ccよりも1200ccと排気量をアップさせることが、最も効果があるエンジンチュ-ニングであるというのです。
ですから、ビートのエンジンもノーマル排気量のボア(ピストンの直径)を2mmにし、700ccにするのが、定番となりつつあるようです。
たった40ccほどのアップですが、かなりトルクが上がって、車が前へ前へと行く感じがして、すぐに体感でき、効果は絶大!大金を使った甲斐があった!よかった!となるのですが、私ははっきり言いまして、ビートのボアアップチューニングには否定的でした。
その理由をこれから述べていきます。
前述のように、ビートのエンジンはメーカーによるチューニングがかなり施されており、たかだか40馬力代の出力を無理やり64馬力(とは言ってもほとんどのビートは55.6馬力しか出ていないと思いますが)にしてしまっています。
パワーが上がるということは、それに伴い発生する熱量も大きくなると言うことですが、ビートには明確に他のE07A搭載車に比べて、熱対策を施しているということは全くと言って良いほどありません。
ミッドシップというレイアウトで、熱のこもりやすいエンジンルーム故、タイミングベルトやデスビのトラブルが多発するのは承知の事実ですが、ビートでサーキットや峠をハイペースで走ると最も深刻となるのが油温、つまりエンジンオイルの温度が非常に上昇してしまうということなのです。
もちろん、水温も上昇していくのですが、これに関しては、一時的にヒーターを全開にすれば下がりますし、ラジエターのコア増しをすれば、ほぼ大丈夫です。
何と言っても、ラフとはいえ水温計が付いているのですから、誰でも見ればすぐに分ると思います。
しかし、油温は油温計を付けていない限り、知ることはできないので、ビートでスポーツ走行される方には是非とも付けていただきたいパーツです。
私がノーマルエンジンで何も熱対策を施していない状態でビートをサーキットで走らせたとき、あまりの油温の高さにびっくりしたものです。
外気温が20℃以上であれば、確実に130℃以上になります。これは水冷エンジンとしては限界を超えていると言ってもよいでしょう。
ノーマルエンジンでもこうなのですから、ボアアップしていれば・・・・。
ノーマルよりももっとリングのへたりなどが早期に訪れるでしょう。
ビートに乗っておられている方で、どうも最近エンジンオイルの消費が多いという方は、まず間違い無く、油温の上昇によるピストンオイルリングのへたりが原因だと思われます。
ボディブローのようにじわじわと熱がオイルリングをへたらせ、オイル上がりの症状がでてくるのです。
結構回して乗っておられるならば、まず10万キロは持たないでしょう。
更にボアアップをしていれば、ノーマルのエンジンライフの半分以下というのが、以前の私の見解です。
それに、いきなり2ミリもボアを広げてしまうとブロックがもったいないと思います。部品で購入するとなると10万円以上しますから・・・・。
現在では水冷オイルクーラーKITやオイルパンスペーサー等、エンジンの冷却系パーツも充実してきましたので、油温や水温の温度管理をしっかりできるようになったことで、ビートのエンジンライフも確実に向上させられると思っていますが、2007年にホンダがオーバーサイズピストンの供給をストップしてしまったので、これからいかに安価に元の性能を維持するかがテーマだと思っています。

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